一昔前までは「終身雇用」が当たり前の時代で、定年まで一つの会社で生涯を全うするのが社会人としての常識でした。しかし、今やずっと同じ会社で働き続けたいと思っている人は約3割程度にまで減り、将来的には独立を視野に入れたり、転職をしてキャリアアップしていく時代へと変わりました。
業種問わず、世間一般的には転職が成功する年齢は35歳まで、未経験業種であれば20代後半がピークと思っている方が多いのではないでしょうか。
その中で専門職である看護師は常に人手不足と言われており、年代問わず引く手数多という声を聞いて安心している看護師さんがいる反面、40代からでも転職に有利なのか不安に思っている方も少なくないはずです。
40代は仕事に限らずプライベートにおいても1つの節目です。仕事とプライベートにおいて充実させるためにどのようにすれば転職を成功させられるのでしょうか。
この記事では、40代看護師が転職する際に押さえておきたいポイントやおすすめの方法についてご紹介します。
看護師の40代転職は厳しい?
40代というとある程度の役職や地位に就いていなければ転職が難しいように感じられますが、医療業界では40代看護師の需要は高く、転職は容易であると考えられます。詳しく見ていきましょう。
看護師転職市場は常に売り手
40代の看護師の需要が高い理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
そもそも看護師が人手不足なので、常に人材が求められています。したがって、40代でも看護師経験がある方は転職に有利です。
人手不足が続いているのは、日本人の高齢化が影響しています。年々高齢者人口が増えると、介護や治療が必要になる高齢者が増えるということが問題となり、介護・医療従事者が不足するため、常に看護師の補充が必要になります。
高齢化は、日本やアメリカなどの先進国に顕著にみられる現象で、発展途上国ではさほど問題になっていません。
さまざまな技術の発展により平均寿命が伸びていることも高齢化の原因の1つですし、少子化による20代・30代の若年層人口の低下により、40代の看護師の需要が高まっています。
また、40代の看護師は結婚や出産などのライフイベントが一通り落ち着いてきた時期で退職率が低く、年齢的ににも中長期の継続勤務が可能であるため、引く手数多といえるでしょう。
20代から看護師として働き、一度子育てなどを理由に現場から離れた40代看護師さんも、今までの経験を活かして転職を実現させることが可能なので、ぜひ前向きに転職や復職を検討し、これからのキャリアプランを立てましょう。
10年以上働いてもらえると期待される
40代看護師の場合、10年以上働いてもらえると病院側に期待されるので転職に有利です。
特に、20代の頃から看護師として経験を積んでいる方は、20年近くの勤務実績があるため、ある程度の役職を経験していたり、若手看護師の教育を担当するなどしたりしているので、転職は容易になります。
ただし、40代の看護師の転職が容易であるとはいえ、入職しては転職を繰り返すようなキャリアの積み方をして50代まで過ごすのはおすすめしません。
50代の転職となると求人数が激減しますし、求人があったとしても給与などの待遇面の条件が悪く、今までの経験に見合う条件での転職を実現させることはできないでしょう。
そこで、今後のキャリアプランをしっかり立て、10年以上は勤められそうな職場を転職先候補にしましょう。
年齢を重ねるにつれて徐々に体力は低下していきます。「将来的に夜勤の回数を減らせる」「入院病床がないためそもそも夜勤がない」「精神科など肉体的負担が少ない」など、入職後長く勤められそうな施設を探しましょう。
その施設で働いている看護師の勤続年数を確認したり、既に50代の方が働いているか、平均年齢を確認するなど、採用面接時に確認したりことで、長く勤める気でいることをアピールできます。
実際に長く勤めることで、40代からでもプリセプターや主任、看護師長などにステップアップできることもあります。
看護師が40代転職で採用を勝ち取るためにやるべきこと
「今更どうやって転職活動を進めれば良いのかわからない」「40代の転職は今までのやり方ではダメなのではないか」このように思う方もいると思います。
転職活動をするうえで自己分析や今までのキャリアの棚卸し、情報収集などの準備をしなければなりません。40代の看護師が転職をするために準備することにはどのようなことがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
将来のキャリアの洗い出し
看護師が転職を検討する時に考えなければならないのは、病棟やクリニックなどの施設規模はもちろんのこと、訪問看護ステーションや介護施設といった病院以外の施設に転職するのか。正社員・パート・アルバイトといった雇用形態をどうするか。また、今まで自分が経験してきた科に絞るか他の科にするのかなどの様々な選択肢です。
今まで看護師として経験してきた実績をフル活用してキャリアアップを目指し、収入アップを目的とする場合、施設規模や夜勤の有無、診療科などは今まで携わってきた施設に近い転職先を選びましょう。即戦力として活躍できるうえに、プリセプターや主任、看護師長といったポストに最短で上がれるかもしれません。
ライフワークバランスを保って過ごしたい場合、クリニックなどの入院病床がなく夜勤が発生しない施設や、介護施設や訪問看護ステーションなどの一定の休みが決まっている施設を転職先候補として検討すべきでしょう。
体力が衰えてくる50代でもバリバリ働くビジョンを描くのであれば、肉体的な負担が少ない施設を候補にするでしょう。逆に、急性期病棟などの体力的にきつい病棟を希望して、体力の限界まで走り続ける選択肢もアリだと思います。
このように、自分が将来思い描くキャリアビジョンを洗い出し、どのような転職をすることで今後の人生が豊かになるかを具体的にイメージすることをおすすめします。
友人・同僚から情報収集
看護師の友人や職場の同僚から話を聞き、友人が勤めている施設の情報を聞いたり、同僚の知人を紹介してもらい話を聞くなど、転職に関する情報収集を行いましょう。
実際に働いている人であれば施設の内情には詳しいので、仕事内容や人間関係、休みの取りやすさなど、実際に働いてみなければわからない情報を得ることで、入職後に「聞いていた話と違う」といった入職後のミスマッチのリスクを減らせます。
また、知人を通して情報収集を行なった場合、その施設で看護師を募集しているか確認し、紹介で入職できるケースもあるかもしれません。紹介で入職を検討する際は、どのような人材が採用される傾向にあるのか採用基準に関する情報も収集し、対策を立てて選考に進みましょう。
紹介での入職の場合、デメリットとして「すぐに辞めることができない」ということがありますが、40代看護師の紹介入職に限っては、長く勤めることが前提の転職活動になるので、特にデメリットはないように感じます。
強いて言うのであれば、紹介してくれた知人が優秀である場合、期待に応えなければならないという一定のプレッシャーを感じてしまうかもしれないので、紹介に頼らず、まずは情報収集をメインに行いましょう。
転職サイトへの登録
転職サイトを利用することで転職を効率よく進めることができるので、まずは転職サイトに登録しましょう。今では業種特化型の転職サイトが多く存在するので、看護師に特化した転職サイトを複数登録することで最近の求人情報や転職の動向を把握できます。
エージェント型の転職サイトであれば、登録することで専門のキャリアアドバイザーの転職支援サービスが利用できます。求人紹介だけでなく、選考書類の準備・添削、面接対策、施設の見学、条件交渉、入職後のアフターフォローに至るまで一貫してサポートしてくれるので、何から始めて良いのかわからない方や忙しくて転職活動に時間が割けない方にもおすすめです。
また、転職サイトには「20代の早期転職に強みを持つサイト」や「30代〜40代のキャリア採用に強みを持つサイト」など、転職サイトごとに扱っている求人の質が異なるので、40代の転職に強みを持つサイトを探して登録しましょう。
40代看護師が転職を思い留まった方が良いケース
ここまで、40代看護師の転職が容易である理由について説明してきました。
しかし、誰もが転職に有利なわけではなく、転職に失敗してしまう可能性が高い方もいるのが現実です。ここでは、転職をしない方が良いケースについてご紹介します。
すでに転職回数が5回以上ある
これまで転職回数が多い方、すでに5回以上している方は転職活動をしても思ったように採用されず、転職が難航する可能性があるため、40代での転職はリスクを伴います。また、採用されても希望に合った条件での転職は難しいかもしれません。
転職回数が多い方は、「どうせ長くは続かないだろう」と思われてしまいがちですし、何よりも自分自身が続けられるのか不安に思っていると思います。このような状態では面接で質問された時に明確な回答はできないでしょう。
そこで、今までの経緯をしっかりと説明し、転職回数が多い理由を誰が聞いても納得できるような理由や、次は長く勤めたいという気持ちを言葉にして伝えられるように準備しておきましょう。
数ヶ月のスパンで転職を繰り返している場合は話が別かもしれません。しかし、転職回数が多いことは決して悪いことではないと思います。自分自身が理想とするステージに向けてアクティブに活動できるという人間力をアピールできますし、より多くの職場を経験し、多くの知識と経験を積みたいというバイタリティの高さを伝えることもできます。
弱みは強みにもなるので、ポジティブに変換して良い転職を実現させましょう。
病院経験5年未満
業種問わず未経験業種への転職をする時は年齢の上限があり、27歳頃までが未経験での転職のギリギリのラインと言われています。
年齢を重ねるにつれて求められるのは経験で、看護師として病院での勤務経験がないまま40代で転職するのは現実的ではありません。
病棟勤務の場合、特に急性期病棟などは患者さんの症状も急変しやすく、緊急処置が必要なケースが多いため、より広い看護知識や経験が求められます。夜勤対応など肉体的負担も大きいですし、未経験であれば早期のキャリア形成が図れる若年層の看護師を積極的に採用するでしょう。
美容クリニックなどの美容看護師も、美容に対する意識を持ち、日頃から美容知識を身につけている方でなければ難しいです。美容クリニックに来院される方々は美容に対する意識が高く、無意識のうちに受付スタッフにも美しさを求めています。
そのため、美容意識が無頓着な方では務まりませんし、他の科のクリニックや病院とは求められる知識や使用する医療機器も異なるので、40代看護師が未経験で転職する場合は、条件などは選り好みせず、1からチャレンジする覚悟で臨みましょう。
また、医療現場で使用される医療機器は日々進化し、新しいものに替わります。病院での勤務経験が浅かったり、ブランクが長すぎると知識面で大幅な遅れを取っているため転職では不利といえるでしょう。
40代看護師におすすめの転職先【目的別】
転職をする時に重要になってくるのが、将来のキャリアの洗い出しを行い、自分自身が将来的に何を目的に転職をするのか把握することです。
転職の目的が明確であれば、目的が果たせる施設を探すのみです。ここで、目的別のおすすめの転職先についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ライフワークバランス重視な方は美容クリニック
「子育てが落ち着いて自分の時間がほしい」「働きたいけれど仕事漬けの生活はしたくない」「夜勤など体力的負担が大きいのは避けたい」このような方には美容看護師をおすすめします。
美容クリニックであれば入院病床がないため夜勤は発生しませんし、基本的に予約診療がメインのため急な残業は発生しません。自由診療が主なので患者さん一人あたりの単価が高く、そのおかげで給与水準も悪くありません。
良いところだらけの印象ですが、美容看護師は美容に対する興味や意識が高く、同じような考えを持った看護師が多いため、美容に対して無頓着の方の場合、自ら知識を身につけることや診療時間外の勉強会に参加したり、クリニックで販売している美容商品を試用するなど、モチベーションの維持が難しい可能性が高いです。
元々美容に興味があり、美容のためにある程度お金や時間をかけられる方にはおすすめの施設といえるでしょう。
管理職を目指したい方は訪問看護ステーション
訪問看護ステーションの管理者になるための条件は、「看護師資格」または「保健師資格」を保有している人です。そのため、40代看護師が訪問看護ステーションに転職することで管理職になれる可能性があります。
また、訪問看護ステーションには新入社員から管理職になるための研修計画が充実している施設があります。そのような施設に転職することで、40代からでも管理職として活躍できるでしょう。
訪問看護ステーションは24時間営業している施設もありますが、決まった曜日休みで残業が少ない施設もありますし、介護スタッフとチーム単位で利用者さん宅へ訪問に行くので、介助などの肉体労働はあまりありません。体力が徐々に衰えている40代でも無理なく働けるでしょう。
幅広い知識を学びたい方は総合病院
「もう一度夜勤をやろうかな」「急性期病院で働いてみたい」「長いブランクがあったけどもう一度働いてみたい」など、子育てなどが落ち着いてきた40代を機にもう一度自分がやりたい仕事をしたいと思う看護師もいます。
総合病院は多数の診療科があり、看護師としてより幅広い知識と経験を身につけたい方にはおすすめです。急性期病棟や夜勤勤務がある職場は体力的にキツく、年齢的にもキツいと感じるかもしれません。しかし、家庭の事情などで自分が本当にやりたかったことを我慢してきたのであれば、やりたい仕事に就く方が悔いも残りませんし、きっと応援してくれる人はいるはずです。
自分らしさを持って思いっきり仕事ができる最後のチャンスかもしれないので、後悔しない道を選びましょう。
看護師の40代転職におすすめの求人サイト
50代に転職しようと思っても、応募できる求人がなく、採用される可能性も極端に下がってしまうので、40代の転職は慎重に行う必要があります。そこで、転職活動を支えてくれるのが転職サイトです。
転職サイトは「サイト型」「エージェント型」があり、自身で求人を検索する。専任のキャリアアドバイザーによる転職支援サービスを提供している。その両方を利用できる。などいくつかあります。
また、看護師に特化した転職サイトも多くあり、働いている看護師や転職者のリアルな口コミが掲載されていたり、転職に必要な情報を記事として紹介しているケースも多いため、より多くの情報量と正しい情報を得ながら、慎重に転職活動を進めましょう。
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看護師が40代転職を成功させるコツ
40代看護師でも転職できることは説明してきましたが、良い転職を実現させるためのコツはあるのでしょうか。みていきましょう。
様々な求人に応募する
20代や30代で転職活動をする場合、学歴や経歴にもよりますが、書類通過率は10%から多くても30%と言われています。書類が中々通らなければ、作成した履歴書などの添削が必要かもしれませんし、面接まで進めなければそもそも転職を成功させることができないため、とにかく多くの求人に応募して面接までこぎつけましょう。
もし志望度が高い施設の書類が通過し面接まで進んだとして、模擬面接や実際の面接経験がなく、突然の面接でテンパってしまい、結果的に不採用にでもなったら後悔してもしきれない思いになると思います。
面接を重ねると自分自身を客観的に見られるようになり、本当の志望動機や希望条件が見えてくる時があります。そして、偽りの質疑応答ではなく、自分自身が納得したうえで受け答えができるようになるため、面接官の印象に残る受け答えができるようになるのです。
模擬面接をしっかり行い、実際の面接を経験して場数を踏むことで、志望度が高い採用面接時に真の実力が発揮できるように準備を進めましょう。
また、多くの求人に応募することは、採用の可能性を高めるだけでなく、希望求人の洗い出しを行えます。キャリアアドバイザーから書類選考通過の連絡を受けた時に、「本当に入職したい」と思う求人であれば本気で面接対策をするでしょう。そうでない場合、どの条件が「微妙」なのか考えてみましょう。きっと自分自身が働くうえで求めている絶対条件と妥協点が見えてきます。
自分自身の将来ビジョンを思い描き、後悔のない転職活動にしましょう。
自分の強みをしっかりアピールをする
転職の準備段階で自己分析を行なっていると思いますが、自分の強みを明確に理解し、採用担当に伝えなければ転職は成功しません。
ポイントとしては、志望動機や自分の強みに一貫性を持たせ、「だからうちに入りたいのか」と思わせることです。
長年同じ科で経験を積んだ40代看護師であれば仕事の強みは伝えやすいかもしれません。それでは複数の診療科を経験している方や10年以上のブランクがある方は不利になるのでしょうか。そんなことはありません。それぞれ経験したことは自分一人しか経験できない唯一無二の経験です。一見ネガティブに捉えられそうなことでも、伝え方ひとつでポジティブになり、選考を有利に進めることが可能です。
柔軟な視点で物事を考えることを意識し、弱みだと思うことを強みにできる程のポジティブ思考で臨みましょう。
看護師の40代転職は厳しい?まとめ
転職市場や業界動向は日々変化していきますが、看護師が人手不足である以上、40代看護師の転職は容易です。
転職サイトを上手に活用し、多くの情報量と正しい情報収集を行い、50代から定年まで勤める覚悟とイメージを持って将来のビジョンを描きましょう。
そして、40代である自分の今までの経験を見つめ直し、唯一無二の強みをアピールすることで、必ず良い転職を実現できます。
転職をしようか迷った時、転職したいけれど不安な時にこの記事を参考にして、転職を成功させてください。