多くの業種に共通することですが、働き始めて1年目は理想と現実のギャップを感じて、辞めたいと考える人がかなりいるようです。中でも看護師では、1年目でそう考える人が特に多いと聞きます。
それは仕事がハードであったり、人命を預かるプレッシャーがあったり、人間関係であったりと理由は多岐にわたり、当然ながら転職を考える人も出てきます。しかし、1年目であることから、転職はある程度経験を積んでからという考え方もあるでしょう。
実際、看護師の方の中には踏みとどまって良かったという例も多々あります。とはいえ、どうしてもストレスに耐えられず、心身の疲労が深まりゆく一方の状況では、早いうちに転職をした方が良い将来につながる場合もあるでしょう。
転職は不安を伴いますので、実際に1年目に転職された人たちがどうなっているかが気になるところです。今回は看護師1年目のみなさんの転職の実態やそれに至る理由を確認し、その上で看護師1年目の方の転職に向いている転職先とその成功例をご紹介します。
もちろん、ここで紹介する転職先がすべてではありませんが、想像力を働かせてご自身の将来の参考としてください。
1年目看護師の離職の実態を知っておこう
まずは1年目看護師の離職の実態を、データをもとに確認しておきましょう。「日本看護協会」の現在確認できる最も新しい情報をもとに、概略をお伝えします。
1年目看護師の離職率は高め傾向
看護職員の離職率は正規雇用の看護職員が10.7%です。そのうち新卒採用者、つまり今回のテーマである1年目看護師の離職率が7.8%となっています。
既卒の採用者、つまり中途採用の看護師の離職率は7.7%であることから、1年目看護師の方が上回っているという現実が分かります。全体の傾向としては、それ以前の状況と比較して、ほとんど横ばいです。
正規雇用看護職員の離職率は、病床規模別に見ると小規模病院で高く、都道府県別では大都市部で高いという傾向も以前から続いています。
給与面は横ばい
既卒採用者はおよそ6人に1人が、再就職後の採用された年度のうちに退職しています。医療機関としては定着を促すように、実態を把握して取り組むことが課題といえるでしょう。
看護師の給与および夜勤手当は、多少の増加はあるにしても、ほぼ横ばい傾向にあります。新卒看護師の予定初任給(基本給と税込給与の総額)も、ほとんど横ばいです。また、勤続10年で非管理職の中堅看護師の基本給も、同様に横ばい傾向が伺えます。
ほかには、病床の規模が離職に関係している傾向が続いています。具体的には正規雇用看護職員、新卒採用者、既卒採用とも、99床以下と100~199床の病院で離職率が高くなっているのです。
病床規模別の看護職員離職率
以下に、病床規模別の看護職員の離職率を一覧表にしてご紹介しておきます。参考にしてください。
病床規模別・看護職員離職率:2018 年度離職率(2019 年調査)
床数 | 回答施設数 | 正規雇用 | 新卒 | 既卒 |
---|---|---|---|---|
全体 | 3,0781 | 0.7% | 7.8% | 17.7% |
99以下 | 7201 | 1.5% | 11.3% | 25.7% |
100~199 | 1,073 | 11.5% | 9.5% | 19.6% |
200~299 | 459 | 11.0% | 7.9% | 16.7% |
300~399 | 356 | 10.6% | 6.8% | 15.0% |
400~499 | 204 | 10.2% | 8.3% | 14.1% |
500以上 | 263 | 10.4% | 7.4% | 11.7% |
無回答・不明 | 3 | 12.4% | 0.0% | 11.1% |
病床規模別・看護職員離職率:2017 年度離職率(2018 年調査)
床数 | 回答施設数 | 正規雇用 | 新卒 | 既卒 |
---|---|---|---|---|
全体 | 2,800 | 10.9% | 7.5% | 16.9% |
99以下 | 669 | 13.1% | 12.2% | 25.9% |
100~199 | 939 | 12.4% | 10.7% | 18.2% |
200~299 | 402 | 10.5% | 8.1% | 17.5% |
300~399 | 316 | 10.8% | 7.5% | 13.6% |
400~499 | 189 | 10.1% | 6.4% | 10.9% |
500以上 | 259 | 10.3% | 7.0% | 10.8% |
無回答・不明 | 26 | 11.1% | 6.2% | 16.5% |
※「回答施設数」には正規雇用看護職員離職率算定の基となった施設数を記載
引用元:ニュースリリース|日本看護協会
1年目の看護師が辞めたいと思う理由
1年目看護師が辞めたいと思う数々の理由から、比較的共通しているものを集めてみました。項目数は多いですが、それらが多くの1年目看護師に共通する理由なのです。あなたにも、当てはまるものがあるのではないでしょうか?
- 先輩や上司との人間関係
- 残業や夜勤で体力的につらい
- 配属先が希望したところではない
- 怒られることが多い
- 同期と比較される
- 持ち帰りでのレポート作成が嫌だ
- 理想や期待と現場のギャップ
- 命を預かるプレッシャー
- 思っていたよりも仕事が大変
- 先輩からのいじめや嫌がらせ
- 担当した患者さんの死に直面する
- 職場のセクハラ
転職の前にとってみよう!6つの行動
「辞めたい」「違う職場に移りたい」と思ったときに、一時の感情だけで決心するのはよくありません。一旦立ち止まって冷静になり、本当にそれでいいかを考えてからでも、遅くはないのです。
場合によっては解決法が見つかったり、道が開けたりするかもしれません。そして立ち止まるときに、3つの行動を試してみてください。そこから変化が生まれるかもしれないのです。転職しないで解決すればそれはそれでよいことでしょう。
それでも解決しないとあれば、いよいよ転職に向けて3つの行動をとってください。順を追って説明します。
環境改善に向けた3つの行動
- 異動を願い出る
- 休暇をとってみる
- 人間関係の改善を試みる
異動を願い出る
人間関係や職場環境に問題がある場合は、同じ医療機関でも違う部署に異動できれば解決する可能性は高いといえるでしょう。人事異動にはタイミングもあるので、難しい面もありますが、ダメ元で願い出て見るのも1つの選択肢です。
休暇をとってみる
辞めたい気持ちが膨らむと、心が加速度的に荒んでいくので、妥当な判断ができなくなります。有給休暇や特別休暇がとれるのであれば、数日間〜1週間でも休んでみましょう。
一旦職場から離れて、仕事を忘れて好きなことに興じ、心をリフレッシュしてみるのです。新たな気持ちで出勤すれば、それまでの悩みだったことへの捉え方が変わり、乗り越えられる可能性があります。
人間関係の改善を試みる
根っからの悪人などそうそういません。ちょっとしたことがきっかけで、良くも悪くもなるのが人間関係の難しさです。不満を感じていることが行動に現れると、人間関係はさらに悪化しがちといえます。
理不尽に思えることでも「仕事上のこと」と心に折り合いをつけて、一度受け止めてしまいましょう。あくまでも誠実に人間関係に向き合ったときに、もつれた糸が解けるように改善することもあるのです。
以上の3つの行動のどれか、あるいはすべてを試して環境が改善しなければ、もう無理にその職場にこだわらなくてもよいかもしれません。そのときこそ、前向きに転職を考えてみましょう。
転職に向けた3つの行動
- 自分に合う職場は何か考える
- 退職の手続きを準備しておく
- 看護師転職サイトに登録する
自分に合う職場は何か考える
転職する気持ちが固まったなら、できるだけ次の職場では定着したいものです。そのためには、より自分に合った職場を探すことが重要となります。それはどういう職場なのかを、現在の職場に照らして考えてみましょう。
退職の手続きを準備しておく
退職する際の手続きは、税金関係や公的年金、健康保険などいろいろあって、なにをどうすればよいか分かりにくいものです。それまでは給料から天引きという形で、自分が何かすることはなかったのだから、多くの人がそうなるでしょう。
とはいえ、手続きが面倒だとばかりに後回しにしてしまうと、思わぬ損をしてしまうこともありえます。転職を決心したなら、必要な事前に把握しておき、その際に速やかに進められるようにしておきましょう。
看護師転職サイトに登録する
現在では看護師に特化した転職サイトが数多くあり、支援してもらえるサービス内容も充実しています。転職活動に入るにあたって、ぜひ登録しておきましょう。
それも複数のサイトに登録するのがベターです。上手に活用すると、理想に近い転職が実現する可能性が高まります。看護師転職サイトのおすすめに関しては、以下の記事に詳しく掲載されているので、ぜひ参考にご覧ください。
関連記事:看護師892人が選ぶ転職サイトおすすめ人気ランキングTOP10 求人数や口コミ評判も徹底比較
1年目看護師の転職4つのデメリット
転職活動を始めて興味を惹かれる医療機関の募集に応募し、書類選考や選考面接に臨む段階では、1年目看護師ならではのデメリットが存在します。
代表的なものは以下の通りです。
- 年度の途中で受け入れない病院がある
- 高いスキルが求められる職場がある
- すぐに辞めてしまうのではと思われる
- 転職自体をマイナスに評価される
1年目看護師の転職5つのメリット
デメリットから先に紹介しましたが、悪いことばかりではないのでご安心ください。ここでは、1年目看護師ならではのメリットも確認しておきましょう。
- 新人なので研修を受けやすい
- 気軽に基本的な質問ができる
- 人間関係をリセットできる
- 自分が選んだ環境で働ける
- 複数の職場体験で視野と見識が広がる
1年目看護師におすすめの5つの転職先と成功例
1年目看護師が転職する場合に、さまざまな体験談やアンケートから総合的に考えて、おすすめできる5つの転職先が想定できます。
もちろんここで紹介している以外にも、転職先はいくらでもあります。あくまでも参考として、その5つの職場に転職された1年目看護師のみなさんの成功例を添えてご紹介しましょう。
やりがいを求めるなら総合病院
Yさんの場合
『新卒で入職した病院は中規模の病院でした。最初の動機は労働環境や人間関係の難しさに不満があったことです。それで転職を考え始め、知り合いの看護師に相談しました。
彼女が教えてくれた看護師専門の転職サイトに登録したところ、担当アドバイザーの方が誠実に私の話をひととおり聞いてくださって、共感を示してくれました。
大事なのはそこからです。経験が豊富な担当アドバイザーの方は、私と話し合う中で「認定看護師」の話をしてくださいました。認定看護師のことは、知識としてはもちろん知っていました。
しかし、アドバイザーの方の担当した複数の看護師さんの話も交えて伺う中で、私も認定看護師を目指してみようかなという新しい目標が見えてきました。具体的には最初の職場での経験を生かして「糖尿病認定看護師」を目指そうかなという気になったのです。
そうなると、認定看護師の育成に力を入れている病院がいいということで、ある総合病院を提案してくださいました。選考の手続きや面接の対策も真摯にサポートしてくださり、採用されることができました。
その際に条件交渉も私に代わってアドバイザーの方がしてくださったのには感動しました。その病院は、認定看護師を目指す看護師への手厚いサポートがありました。
現在は職場に馴染んでいきながら、認定看護師になるための勉強にも張り切って取り組んでいます。』
高度医療を学びたいなら大学病院
Bさんの場合
『最初に入職した病院は、そこそこの規模なのですが職員やドクターのやる気があまり感じられず、ビジネスライクでドライな環境でした。理想に燃えて入ったこの世界なのに、本当にこんなのでいいのかなと物足りなく感じる中で仕事を覚えました。
また、人工透析に興味があったので、上司にも透析をやりたいと強く希望を伝えていましたが、人手の足りない科にたらい回しにされ、さすがに疑問を感じていました。
こうしたさまざまに不本意な職場と決別するために、転職活動を始めました。透析に関わりたい気持ちを持ち続けたまま、いろいろと探す中で、透析に力を入れているある大学病院に興味を持ちました。応募したところ、透析への熱意を買ってくれたのか採用されました。
入職してからというもの、日々透析という使命ある高度医療に向き合っており、充実しています。余談ですが看護師寮もあり、同じ地方からの出身者もいて話が合い、オンオフ共に楽しく過ごせています。転職して正解でした!』
患者さんに寄り添う看護を目指すなら訪問看護
Wさんの場合
『元の職場は外科の外来でした。仕事自体に不満はなかったのですが、趣味であるフットケアやアロマを活かせるかもしれない訪問看護に挑戦したいと思っていました。訪問看護の募集は時折見かけたのですが、なかなか動けなかったのは不安があったからです。
というのは、訪問看護は1人で判断する局面が多いと聞いていましたから、環境がめまぐるしく変わる訪問先での看護ケアが、自分に満足にできるかなと。そこで求人案件数が多い看護師転職サイトに登録して、担当アドバイザーの方に相談に乗ってもらいました。
不安に思っていることを話すと、訪問看護の現場の見学をアレンジしてくれて、一緒に行ってくれました。訪問看護の現場で実際に仕事をしている看護師さんに、いろいろと質問させていただき、細かい内容まで具体的に確認できたことで安心できました。
おかげで転職もうまくいき、毎日張り合いがある仕事に従事しています』
私生活を優先したいならクリニック
Eさんの場合
『私はもともと学生結婚をしていました。夫とは自転車ツーリングという共通の趣味があり、彼の休みの日には一緒に遠出します。なので休みを合わせたいのですが、新卒で入職した病院は、休む日を自分の都合で決められなかったのです。
仕事も大事ですが、そのうち子供ができるとツーリングには行きにくくなるので、今のうちにあちこちに行っておきたいのです。しかし、なかなか休みの希望が通らなかったことに不満でした。
仕事は大事ですが、趣味も大切にしたいので悩んでいました。そこで非常勤のクリニックに転職をしようかなと考え、ハローワークに行きましたが、なかなか見つからずに困っていました。
そんな折にインターネットで看護師転職サイトがあるのを知り、早速登録して転職の相談をしたところ、願い通りといえるクリニックでの非常勤の仕事があったのです。
紹介してもらって面接を受けたところ、アットホームなよい雰囲気のクリニックでした。採用されて働く現在は、休みもほぼ希望通りにとれます。ツーリングを楽しみながら仕事にも気持ちよく励むことができて最高です!』
美容に興味があるなら美容クリニック
Sさんの場合
『看護学校を卒業して、リハビリ病院に入職しました。実際に働いてみたところ、夜勤が自分の体質にまったく合わないことが判りました。早めになんとかしたほうがいいと考えて、リハビリ病院を退職しました。
そして、もともと興味を惹かれていた美容クリニックに絞り込んで転職活動を始めました。看護師経験がまだ数ヶ月しかないため、経験不足ということで採用してくれる美容クリニックになかなか出会えなかったのはちょっとつらかったです。
そんななかで、教育研修が充実していて、美容未経験者でも受け入れてもらえるクリニックの看護師募集を見つけました。すかさず応募し、採用されたのです!入職してみると、同じような1年目看護師が多かったことにも安心できました』
まとめ
「辞めたいと考えている1年目看護師」にフォーカスして、その実態や理由、転職までにすべき行動やおすすめの転職先、そしてその成功例をご紹介しました。
転職しないでその場で頑張るという考え方もあります。そしてまた、こだわらずに心機一転を図って転職することで、すべてをリセットして一から頑張るという考え方もあるのです。
ここでは、まずはその職場で環境を改善できる可能性を試すアプローチをし、それでもダメならすぱっと転職モードに入る流れをご提案しました。
辞めたい気持ちになっている1年目看護師のみなさんには、ここでの情報も参考にしつつ、前向きにご自身の将来像を模索してみてください。
なお、「転職.jp」の編集部では、数多くの看護士さんの転職を成功に導くために、おすすめの看護士転職サイトをランキング形式で下記のページで紹介しています。気になる方は是非参考にしてください。