一般企業と同じくタクシー会社には大手と呼ばれる会社と中小の会社が存在します。タクシー業界では、大手企業と呼ばれる会社は少なく、多くは中小企業となります。
そんなタクシー業界では、大手企業か中小企業かによって、待遇面、働き方、仕事のしやすさなど、会社規模によって大きな違いが出ててくるのです。
転職を成功させるには、自分に合う会社であるかを見極めることが大切です。自分に合う会社を見極めるには、大手のタクシー会社と中小のタクシー会社のメリットとデメリット、そして特徴をそれぞれ確認し、比較していく必要があります。
この記事では、大手4社と中小タクシー会社のメリットとデメリット、会社を選ぶための方法などをご紹介いたします。
タクシー会社について
タクシー会社には、一般企業と同じく大手企業と中小企業があります。
法人事業者は、全国で1万5,271社あり、そのうち資本金規模5000万円以上の大企業は全体の2.5%。84.5% のほとんどの事業が、保有車両数30両以下の中小企業となります。
ちなみに、日本で初めて法人タクシーが設立されたのが1912年(大正元年)。東京・有楽町の数寄屋橋際に設立された「タクシー自働車株式会社」がはじめのタクシー会社と言われています。
タクシー会社の大手とは?
全体の2.5%となる大手タクシー会社。中でも、タクシー業界で大手と呼ばれるのが「大和自動車交通株式会社」「日本交通株式会社」「帝都自動車交通株式会社」「国際自動車株式会社」の4社です。
この4社を総称して、業界内では「大日本帝国」と言います。会社の頭文字も取りそのように呼称されているのですが、戦時中の影響も受けたことでそのように呼ばれるようになりました。
この4社は歴史も古く、知名度もあり信用も厚い会社です。
大和自動車交通株式会社
東証2部上場の昭和14年設立のタクシー会社。タクシー・ハイヤー事業だけでなく、不動産業も営んでいます。従業員数約2,200名、平均年齢は50歳。「和」の精神を重んじ、顧客満足を第一を会社の経営方針としています。
日本交通株式会社
昭和3年設立の創業90年を迎える老舗タクシー会社。タクシー・ハイヤー事業をメインに車整備事業も手がけています。従業員数は約1万人。後世に「徳」を残すこと、品格の高い「エクセレントカンパニー」を目指すことが経営理念です。
帝都自動車交通株式会社
昭和13年に帝都タクシー株式会社として創業。京成グループ最大のハイヤー・タクシー事業会社として経営しています。従業員数は約2,000人。「人と人をつなぐ架け橋に」を経営理念に掲げ事業展開しています。
国際自動車株式会社
大正9年創業のタクシー会社。タクシー・ハイヤー事業を軸に、路線バス事業、貸切バス事業、オートリース事業など幅広く事業展開を行なっています。従業員数は約250人。自動車運行に関わるサービスは「kmブランド」として認知されており、常に感謝の気持ちをもってお客さま満足を追求していくことが企業理念です。
大手のタクシー会社【メリットとデメリット】
大手のタクシー会社への転職はメリットもありますが、デメリットもあります。中小タクシー会社と比較するために両方把握しておきましょう。
大手のタクシー会社へ転職するメリット
大手タクシー会社へ転職するメリットは複数あります。それは、大手だから実現できることが多く、ドライバーの厚い待遇を受けることができます。実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。
経営が安定している
大手企業の最大のメリットは経営が安定しているところにあります。タクシー業界は、不況の煽りを受けやすい業界でもあります。しかし、大手企業ではタクシー・ハイヤー事業の他にも、事業展開をしているため安定しやすいメリットがあります。
福利厚生が手厚い
大手企業は会社規模が大きく、従業員数も多いため、福利厚生が充実しています。タクシードライバーのための休憩室や仮眠室、寮や社宅を完備している会社が多い傾向にあります。ドライバーが不満なく勤務できるような制度が充実しているのです。
研修・サポート体制の充実
大手企業では、新人研修や資格取得のサポート体制が手厚い傾向にあります。会社の名前を背負い営業する以上、会社の価値を下げないためにも優良ドライバーを育成していかなければなりません。そのため、実践研修などの大規模な研修を実施、二種免許未取得の場合には資格取得する際は、費用面もサポートしてくれるケースもあります。
独自の顧客
大手タクシー会社は、独自の顧客パイプを持っていることがあります。例えば、「東京4社共通タクシーチケット」などを持ったお客様を乗せる機会が増えるというメリットがあります。
タクシーチケットは、タクシーチケット使用者ではなく、タクシー会社と契約している企業が支払うシステム。そのため、遠距離で使ってもらいやすく、使用頻度も高くなる傾向にあるのです。
それだけでなく、大手タクシー会社は大型オフィスビルや病院、ホテルなどに専用乗り場が設置されていることが多い傾向にあります。専用乗り場の立地から、長距離利用者が多い傾向にあるため、売り上げの確保に繋がりやすくなります。
信頼と知名度
大手タクシー会社は、信頼も厚く知名度もあるため、営業のしやすさと売り上げの確保がしやすいメリットがあります。
会社に信頼をよせているリピート顧客だけでなく、会社で保有しているタクシーの走行台数が多いということは、その分、会社の宣伝にもなっています。知名度が集客に生かすことができるのは大手ならではのメリットです。
大手のタクシー会社へ転職するデメリット
大手タクシー会社への転職は多くのメリットがありますが、大手ならではのデメリットもあります。それぞれデメリットを紹介していきます。
給与の歩合率が低くなる可能性
大手タクシー会社では、全体的な待遇は良いものの、中小タクシー会社に比べ給与の歩合率が低くなるリスクもあります。大手タクシー会社の歩合率は58%〜60%程度に設定されています。
大手では、管理体制が構築されている背景から、運営費用に莫大な経費がかかります。その分、給与面での歩合率が若干低くなる傾向にあるのです。
管理体制が厳しい
大手タクシー会社では、1日の売り上げのノルマが課せられるケースがあり、会社によって戦略が異なるため、一概には言えませんが、ドライバーに営業エリアを指定する会社もあります。
社員に対し、管理を徹底して行なっているため、勤務時間などの管理も行き届いているメリットもある一方で、売り上げに対する管理体制もしっかりしている点がデメリットとしてあげれます。
タクシー会社の中小とは?
全体の84.5%を占める中小タクシー会社。中小タクシー会社の多くは、30名満たない社員数で経営を行なっております。
中小会社の中には、経営を継続させるために、大手企業の看板を借りるフランチャイズ会社契約をしている会社もあります。中小企業はブランド力や売上にバラツキがあると言っていいでしょう。
中小のタクシー会社【メリットとデメリット】
中小タクシー会社への転職のメリットとデメリットを確認して、大手との違いを確認しておきましょう。
中小のタクシー会社へ転職するメリット
大手は組織的である一方で、中小はアットホームであるなど、小規模な中小タクシー会社だからこそのメリットがあります。
働き方が自由
小規模だからこそ働き方が自由というメリットもあります。大手との違いとして、管理職とドライバーの距離が近いところがあり、意見を言いやすいアットホームな雰囲気があります。
さらに、管理体制も厳しくなく、営業エリアも指定されないため、自分のペースで営業できるような体制が整えられている会社がほとんどです。
歩合率が高い会社もある
中小のタクシー会社は、歩合率は高い傾向にあります。最低でも60%に設定されており、頑張る分だけ収入として反映されます。中小タクシー会社が歩合率を高く設定している理由は、人材の流失を防ぐ理由があげられます。
中小のタクシー会社へ転職するデメリット
中小タクシー会社への転職は、小規模ゆえのデメリットもあります。それぞれデメリットを紹介します。
安定していない
大手タクシー会社とは違い、タクシー事業のみで経営している会社は、不況のあおりを受けやすく、経営も安定していないデメリットがあります。また、大手のような予算もないため、福利厚生も充実していない会社が多いのです。
知名度が低い
中小タクシー会社は、保有台数も少なく、知名度が低いデメリットがあります。知名度の低さは、名前が知られているタクシー会社に比べ、顧客がつきにくく不利になることが多いのです。
大手は配車依頼や予約は、アプリなどの独自システムを導入しているため、乗客はタクシーを手配しやすいだけでなく、信頼性と知名度が高い、大手タクシー会社を自然と大手を選んでしまうのです。
営業に苦労する
大手タクシー会社は、企業契約や専用乗り場などが整備されているため、集客するための設備が整えられています。さらに、稼げる都心部では、大手のタクシー台数が多く、そこに参入して集客をするには、努力が必要です。
競争を避け、都心部以外のエリアをターゲットにしても、タクシー需要が少ないため、なかなか稼ぐことができない状況にあります。そのため、中小タクシー会社は、大手に比べ営業に苦労する傾向にあるのです。
大手か中小か?タクシー会社の決め方
大手タクシー会社と中小タクシー会社、それぞれメリットとデメリットを紹介しました。同じタクシー会社でも全く異なる待遇や体制を取っているため、転職する際は、自分に合う会社の見極めが大切です。大手と中小どちらが良いかの決め方を解説します。
希望する年収
どのくらいの年収を希望するかを選択基準とする場合、大手タクシー会社がおすすめです。
大手は、歩合率が中小より低いものの、独自の集客手法や知名度を有しているため、営業がしやすい傾向にあります。中小は大手に比べると営業に苦労する傾向にあるため、高収入を目指すなら大手を念頭に入れて転職を進めるようにしましょう。
希望する働き方
自分がどのような働き方をしたいかを明確に考えましょう。独自の営業方法でエリアに縛られず自由に働きたい人には中小タクシー会社が向いているといえます。
一方、管理は厳しくても安定した働き方をしたい人には大手タクシー会社のような環境が合っています。自分が何を重視するかで、大手か中小かを決めるようにしましょう。
経験の有無
大手タクシー会社でも中小タクシー会社でも、未経験者が活躍できるような研修制度があります。大手ではルールやマナーを含めた徹底した研修を経て営業を行います。中小タクシー会社では、研修後、不明点があれば先輩ドライバーなどに気軽に聞ける環境であるといえます。
はじめのインプットを重視したい人は大手タクシー会社、基礎知識を得た後、経験を経て覚えていきたい人には中小企業が向いています。
まとめ
大手のタクシー会社と中小のタクシーを比較しました。安定と高収入を得られる大手企業がおすすめです。
また、業界の知見がない未経験者は、徹底した研修、手厚い制度が整えられている大手は働きやすい環境ではと思います。会社規模と同時に、自分がどのような働き方をしたいのか考えてから決定するようにしましょう。